私たちは、日本国内の投資ファンドの黎明期である2002年に創業しました。当時と比べると日本全体における投資ファンドの数や投資件数・金額は格段に増え、「投資ファンド業界」全体が大きく成長を遂げています。その背景として、世界規模で事業環境の変化が早まる中で、限られた時間で迅速に企業価値を高めたうえで次なるスポンサーにお譲りする、触媒としての投資ファンドの役割が強く求められていることが挙げられるでしょう。実際にM&A案件に占める投資ファンドの割合はすでに欧米水準に近づいているというデータもあります。ただ、GDPに占めるM&A自体の割合が欧米と比べると小さいことから、日本の投資ファンド業界の市場規模は欧米比で1/7〜1/3とまだ小さいものの、裏を返せば成長余地のある業界であるといえると考えています。
また、近年の企業経営を取り巻く環境の大きな変化の一つに、ESG(環境・社会・ガバナンス)の重視が挙げられます。社会全般にも広くSDGsが認知されるようになってきていますが、企業活動におけるESGへの配慮は、当然ながらファンドの投資家からも求められているわけです。
私たちは創業以来、「日本らしい投資ファンドのあり方」を模索し、実践してきました。例えば、投資家の利益のみを優先するのではなく、投資先企業の顧客や従業員、さらに社会に対して、それぞれに配慮しながら適切に投資を進めていくということが、私たちの考える「日本らしい投資ファンドのあり方」の一つです。これはいわば「三方良し」を重視する価値観ですが、私たちが創業当時から大切にしているこのような「三方良し」の投資のあり方は、比較的新しい概念であるところのESGが掲げるビジョンと近いものがあると感じています。
私たちは「和製ファンド」を謳い、日本企業を対象とした投資活動を行っています。日本は世界有数のGDPを誇る経済大国である一方で、特有の事業慣行や価値観があります。投資ファンドというビジネス自体は海外から輸入されたものですが、ややもすれば資本の論理が先行するやり方を日本の企業に当てはめても、それが企業価値向上に直結するとは限りません。ですから私たちは、企業ごとに各々の歴史の中で積み上げられた事業慣行や意思決定のやり方に配慮・尊重しながら全体最適を志向することを大切にしています。
最終的に到達を志すところは、例えばコーポレートガバナンス・コードといった完成形にあるとしても、それを投資先企業にビルトインする際に、多方面への細やかな配慮・慮りを丁寧に行き渡らせるプロセスを重視することが、私たちの投資スタイルだと考えています。
創業当時は再生案件が中心でしたが、現在では事業承継やカーブアウト案件が中心となっています。市場環境が変化し中心となる案件の性格が変わったとしても、私たちは一貫して「課題解決型」の投資にフォーカスしています。これを別の表現でいえば、「付加価値を創造する投資」ということになります。投資先企業のそれぞれの課題を、投資先の役職員の皆さんと同じ目線で受けとめたうえで、テーラーメイドでソリューションを共創するところに、私たちのユニークさと投資ファンドとしての競争力の源泉があるのです。
当社では、案件のソーシング(開拓)にはじまり、投資の検討と実行、バリューアップ、そしてExitまで、同じメンバーが案件を担当し一気通貫で携わります。最初から最後まで、投資先とともに一丸となって課題を解決しながらバリューアップを目指す、という投資スタイルは、成功だけではなくチャレンジングな局面もすべて自分に返ってくることを意味しますが、それこそが投資ファンド業の醍醐味であり、当社で働く大きな魅力だと思っています。事実、最後まで責任を持って携わることができるという投資スタイルに魅力を感じて入社を決めた、という当社のメンバーも少なくありません。
そしてもう一つ、当社で働く魅力としては、投資件数が国内最大級であり、結果としてさまざまな投資案件に携わることができる、という点も挙げられるでしょう。これまでに当社が手掛けてきた投資案件はすべてナレッジとして蓄積されているため、学べる機会・成長機会の多さも当社で働く魅力の一つです。
投資実行後、私たちは投資先企業の株主となるわけですが、実際に企業活動を支えているのは従業員の皆さんであり、私たちが直接ビジネスを行うわけではありません。ですから、投資先企業の皆さんはもちろん、取引先の方々を含めた関係者全員が納得のうえ協働していただくためには、相手に対するリスペクトが欠かせません。もちろん私たちの意見は伝えますし、時には投資先の皆さんと議論する場面もありますが、一方的な押し付けでは決して上手くいかない、というのが私たちの基本的な考え方です。それぞれの意見に耳を傾け、相手の立場を理解し、お互いをリスペクトし合う姿勢が大事なのです。
2つ目のデリジェンスは、高い職業倫理を持ち、ラストワンマイルまで誠心誠意努力を続けるということ。投資家の方々に対して約束されたリターンをお渡しすることは当然として、さらに良くする余地を見つけてデリジェンスを尽くす。妥協せず自らに対して規律を課し、最後の一瞬まで努力を続けるといった、受託者責任(フィデューシャリー・デューティー)に対する強いディシプリンが求められます。
そして最後のバリュー・クリエーションについては、投資家の方々だけでなく、広い視野で全体のバリューを追求する姿勢を指します。コストカットによる収益性の改善という手法もあるかもしれませんが、それだけに頼るのではなく、投資先企業に新たな付加価値が生まれ、事業が成長し、その結果として投資家の方々にリターンが還元されていくという形こそが、私たちの考えるあるべき投資です。日本のGDP成長率は海外に比べると低成長となっていますが、投資先企業の新たな付加価値の創出を通じて、経済全体に対しても良い影響を与えることができると考えています。
この3つの観点に共感できる方であれば、きっと当社での仕事を楽しみ、活躍できることと思います。
今後日本におけるM&Aの件数や投資ファンドの数は、ますます増えていくでしょう。2023年現在、日本プライベート・エクイティ協会には約60もの投資ファンドが加盟していますが、業界全体が大きくなっていく中で競争環境が激しくなることで、投資ファンドとして求められるノウハウの高度化が求められ、投資サイズや投資テーマ、投資対象とする業種などの専門化が進んでいくと考えられます。
そういった予測の中でも、日本らしい投資のやり方を実践するという私たちの基本的な姿勢は、今後も変わることはありません。ですが、ファンドに求められるノウハウや専門性は、徐々に変わっていく部分もあるでしょう。また、個々人が生まれ育った環境や取り組んできた仕事も異なる中で、当社では何らかステレオタイプなプロフェッショナル像が期待されているということはありません。これから当社に入社していただく方には、ぜひ自分ならではの強みを見つけ、それを磨いていただきたいと思っています。
私たちが創業した2002年から、社会は多様性を増し、企業経営者の方々の意識も大きく変わりました。この変化の激しい時代においては、投資ファンドもまた多様性、つまりさまざまな専門性や価値観を持った人々が集まるチームであることが集合知となり、ファンドの強みとなるはずです。私たちも組織のダイバーシティを重視し、リスペクトを持ってお互いを刺激し合い、お互いから学びながら、今後も日本らしい投資を実践していきたいと考えています。私たちと一緒に、プロフェッショナルとしての高みを目指したいという、強い想いを持った方をお待ちしています。